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データマートとは?非エンジニアでもわかる基礎知識とDWHとの違い

こんにちは、DX攻略部のくろさきです。

現代のビジネス環境では、迅速かつ的確な意思決定が求められています。

そのためには、部門ごとに必要な情報を効率的に抽出し、分析する仕組みが不可欠です。

データマート」は、特定の業務や部門に特化したデータを集約し、迅速な分析と意思決定を支援するデータベースです。

​本記事では、データマートの基本的な概念や、データウェアハウス(DWH)との違い、導入によるメリットについて解説します。

データマートとは?

データマートとは、特定の部門や業務に特化した、分析目的のデータ集積環境のことです。

より大規模なデータウェアハウス(DWH)から必要なデータを抽出・加工し、特定の利用者がアクセスしやすい形で提供するデータベースシステムといえます。

データマートの基本概念

データマートの本質的な特徴は「目的特化型」であるという点です。

全社的なデータを扱うデータウェアハウスとは異なり、マーケティング部門、営業部門、財務部門など、特定の部門や業務プロセスに最適化されたデータ環境を提供します。

例えば、マーケティング部門向けのデータマートであれば、顧客属性、購買履歴、キャンペーン反応率などの情報が整理されており、マーケティング担当者が分析しやすい形でデータが用意されています。

各部門が必要とするデータに素早くアクセスできるため、日々の業務効率化や意思決定の迅速化に貢献します。

データマートの主な特性

データマートは、いくつかの重要な特性を備えています。

  • 専門性
  • アクセス性
  • 規模感
  • 柔軟性
  • 即時性

まず第一に、特定の部門やビジネスニーズに特化したデータ構造を持つという「専門性」が挙げられます。

この専門性により、各部門が必要とする形式でデータが整理され、業務に直結した分析が可能になります。

 

次に、エンドユーザーが使いやすいインターフェースを提供する「アクセス性」も重要な特性です。

技術的な専門知識を持たないビジネスユーザーでも直感的に操作できる環境を実現しています。

 

また、データウェアハウスよりも小規模で特定のデータセットに焦点を当てるという「規模感」も特徴的です。

必要なデータのみを扱うことでパフォーマンスの向上とコスト効率の改善が図られます。

 

さらに、部門固有の要件に合わせて最適化可能という「柔軟性」も備えており、各部門の分析ニーズの変化に応じてデータ構造やインターフェースをカスタマイズすることができます。

 

最後に、部門の意思決定に必要なデータをすぐに提供できる「即時性」も重要な特性です。

迅速なデータアクセスにより、タイムリーな意思決定を支援し、ビジネスチャンスの最大化や問題の早期発見・対応を可能にします。

 

これらの特性は互いに関連しており、相乗効果を生み出します

例えば、「専門性」と「規模感」の適正化により「即時性」が向上し、「アクセス性」と「柔軟性」が組み合わさることで、ビジネスユーザーによる自律的なデータ活用が促進されます。

データマートの特性を最大限に活かすためには、部門の業務プロセスやデータニーズを深く理解し、ユーザー中心の設計を心がけることが重要です。

単なる技術的な実装ではなく、「ビジネス課題をどう解決するか」という視点から設計することで、真に価値あるデータマートを実現できます。

データウェアハウス(DWH)との違い

データマートとデータウェアハウスは、どちらもビジネスインテリジェンスを支えるデータ基盤としての役割を担っていますが、いくつかの重要な点で異なります。

DWHとは?

データウェアハウス(DWH:Data Warehouse)とは、企業の業務システムから収集した多種多様なデータを、統合・蓄積・管理するための大規模なデータベースシステムです。

DWHは「企業の情報資産の倉庫」と表現されることもあり、経営判断や業務改善のための分析データを一元的に管理する役割を担っています。

DWHについてより詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

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データマートとDWHの比較

データマートとデータウェアハウスは、企業のデータ分析基盤として共に重要な役割を持ちますが、それぞれに異なる特性と目的があります

以下にデータマートとDWHの比較表を挙げておきます。

観点 データマート DWH
スコープ 部門やテーマ単位 全社横断
目的 迅速な部門別分析 統合データガバナンス
データ量・複雑度 小〜中規模、スター型スキーマ中心 大規模、正規化+履歴テーブル
アクセス頻度・性能要件 高頻度・即時応答が重視 大量クエリを耐えるスループット重視
利用ユーザー 部門アナリスト、マネージャー 経営企画、データエンジニア、全社BIユーザー

データマートとDWHは 「同じデータ基盤でも守備範囲が違う」と考えると分かりやすいです。

スコープ(守備範囲)

データマートは営業部やマーケ部など「部門や特定テーマ」に絞った小さな倉庫、DWHは会社全体をカバーする巨大な倉庫です。

目的

データマートの主目的は「現場がすぐ数字を見て動く」ことです。

一方、DWHは「全社共通の『正しい数字』を一元管理し、長期的な経営判断や監査に耐えること」です。

規模と複雑さ

データマートは、必要なテーブルだけを並べ替えて置くためデータ量が小さく、構造もシンプルです。

一方DWHは、取引履歴や顧客情報など大量データを細かく整理(正規化)して保管するので、大規模で複雑です。

性能の重点

データマートは「高速にパッと返す応答速度」が重要です。

一方DWHは「一度に大量の問い合わせ」に耐えるスループットや履歴管理が重視されます。

利用ユーザー

データマートは現場マネージャーや部門アナリストが日々使うツール感覚です。

DWHは経営企画、データエンジニア、全社向けBIレポートなど広い層が利用します。

要するに、データマートはスピード重視の「現場用ショートカット」、DWHは正確さと統合管理を担う「全社のマスター倉庫」といえます。

筆者
この役割分担を押さえると、どちらをいつ使うべきか判断しやすくなります。

データマートのタイプ

データマートは構築アプローチや位置づけによって、大きく3つのタイプに分類されます。

それぞれのタイプには特徴があり、企業の状況やニーズに応じて最適なアプローチを選択することが重要です。

  • 従属型データマート
  • 独立型データマート
  • ハイブリッド型データマート

従属型データマート

従属型データマートは、データウェアハウスから派生して構築されるタイプのデータマートです。

企業の中央集権的なデータウェアハウスから必要なデータを抽出・変換し、部門別のニーズに合わせた形でデータマートに格納します。

この方式の最大の利点は、企業全体でのデータ一貫性が保証されることです。

すべてのデータマートが同一のソース(データウェアハウス)から派生するため、部門間でのデータ定義や計算ロジックの不一致が起きにくくなります。

また、データクレンジングやデータ変換のルールが一元管理されるため、データ品質の維持も容易です。

従属型データマートの構築には、まず全社的なデータウェアハウスが存在していることが前提となります。

そのため、初期投資が高くなる、プロジェクト期間が長くなるといった傾向がありますが、長期的には最も堅牢で管理しやすいアーキテクチャと言えるでしょう。

大企業や、データガバナンスを重視する金融機関・医療機関などでは、この従属型のアプローチが好まれます。

独立型データマート

独立型データマートは、中央のデータウェアハウスを経由せず、直接運用システムからデータを取得して構築するタイプです。

各部門が独自にデータソースから必要なデータを抽出・変換し、自部門のデータマートを構築・運用します。

この方式の最大の利点は、迅速な導入と柔軟性です。

データウェアハウスの構築を待つ必要がないため、部門固有のニーズに素早く対応できます。

また、他部門やIT部門への依存度が低いため、独自の判断でデータマートの改修や拡張を行いやすいという特徴もあります。

一方で、データの一貫性やガバナンスの面で課題が生じやすいのが独立型データマートの弱点です。

各部門が独自にデータ定義やビジネスルールを設定するため、同じ「売上」という言葉でも部門間で異なる数値を指していることがあります。

また、同じETL処理が複数のデータマートで重複して行われるといった非効率も発生しがちです。

中小企業や、部門の自律性を重視する組織、あるいは特定部門のデータニーズが非常に専門的で他部門との共通点が少ない場合には、この独立型アプローチが選択されることがあります。

ハイブリッド型データマート

ハイブリッド型データマートは、従属型と独立型の特性を組み合わせたアプローチです。

基本的なデータはデータウェアハウスから取得する一方、特定の専門的なデータや最新データは直接運用システムから取得するといった柔軟な構成をとります。

この方式の利点は、従属型の一貫性と独立型の柔軟性・即時性を両立できる点にあります。

例えば、顧客マスターや商品マスターといった基幹データはデータウェアハウスから一貫性を持って提供する一方、日々変動する販売データや在庫データは運用システムから直接取得するといった使い分けが可能です。

また、全社的なデータウェアハウスの構築を段階的に進めながら、並行して部門ごとのデータマートも構築していくという移行戦略としても、このハイブリッド型は有効です。

時間の経過とともに、独立型から従属型へと段階的に移行していくケースも少なくありません。

ビジネス環境の変化が激しく、データニーズの即時対応と長期的なデータガバナンスの両立が求められる現代の企業では、このハイブリッド型データマートの採用が増えています。

 

データマートのタイプ選択は、組織の規模、分析ニーズの緊急度、データガバナンスの成熟度、IT予算などを総合的に判断して決定すべきです。

どのタイプを選択するにせよ、長期的なデータ戦略の中での位置づけを明確にし、将来のデータニーズの変化にも対応できる柔軟な設計を心がけることが重要です。

データマートのメリット

データマートを導入することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。

具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。

データマートのメリット

  • 部門特化型の分析環境による意思決定の迅速化
  • エンドユーザーの使いやすさ向上
  • パフォーマンスとレスポンスの向上
  • データガバナンスとセキュリティの強化
  • コスト効率の向上

一つずつ見ていきましょう。

部門特化型の分析環境による意思決定の迅速化

データマートは特定の部門や業務に必要なデータを集約しているため、意思決定に必要な情報を素早く取得することができます

例えば、営業部門のデータマートでは、地域別・商品別の売上推移や顧客セグメント別の購買傾向など、営業戦略の立案に直結するデータが整理されています。

このように、業務に直結したデータが整理されていることで、分析のためのデータ準備時間が短縮され、意思決定までのリードタイムを大幅に削減できます。

筆者
ある小売業では、データマート導入後、週次の販売戦略会議の準備時間が従来の1/3になったという事例もあります。

エンドユーザーの使いやすさ向上

データマートは、特定の部門のユーザーが使いやすいように設計されています。これにより、以下のような利点が生まれます。

  • 【業務言語への適応】専門用語の統一:部門で使用される業務用語に合わせたデータ項目名の設定
  • 【分析効率の向上】分析視点の最適化:部門特有の分析切り口(KPI)に合わせたデータ構造
  • 【操作性の向上】使い慣れたツールとの連携:Power BIやTableauなど、ユーザーが日常的に使うBIツールとの親和性

これらの工夫により、ITやデータ分析の専門知識がないビジネスユーザーでも、必要なデータを自分で取得・分析できるようになります。

「セルフサービスBI」の実現に貢献し、データドリブンな組織文化の醸成にもつながります。

パフォーマンスとレスポンスの向上

データウェアハウス全体を検索するよりも、目的に特化したデータマートを利用する方が、クエリのパフォーマンスは格段に向上します。

ある金融機関では、全社データウェアハウスから顧客分析用のデータマートを分離した結果、分析レポートの生成時間が数時間から数分に短縮されたという報告もあります。

著者
レスポンスの向上は、分析作業の効率化だけでなく、ユーザー満足度の向上にも直結します。

データガバナンスとセキュリティの強化

部門ごとにデータマートを構築することで、より細かなアクセス制御とデータガバナンスが可能になります。

  • 部門別のアクセス権限管理:人事データ、財務データなど、機密性の高い情報へのアクセスを適切に制限
  • 用途別のデータポリシー適用:マーケティング用途と内部分析用途でデータの取り扱いルールを区別するなど
  • 監査証跡の明確化:どのユーザーがどのデータにアクセスしたかの追跡が容易

特に個人情報保護法やGDPRなどのデータ規制が厳しくなる中、目的に応じたデータの分離管理は、コンプライアンスリスクの低減にも貢献します。

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コスト効率の向上

データマートは、全社的なデータウェアハウスと比較して、以下の点でコスト効率が高いと言えます。

  • 段階的な投資:部門ごとに優先度の高い領域から順次導入可能
  • 必要十分なリソース配分:必要なデータ量に応じた適切なハードウェアリソースの割り当て
  • 運用負荷の分散:部門ごとの運用管理が可能になり、特定のIT部門への負荷集中を回避

中堅製造業の事例では、全社データウェアハウスの構築を断念した後、営業・生産・購買の3部門に限定したデータマートを段階的に導入することで、初期投資を60%削減しながらデータ活用の効果を得ることができたというケースもあります。

データマート導入時の注意点

データマートは多くのメリットをもたらす一方で、導入や運用には注意すべき点も少なくありません

以下では、データマート導入時に特に気をつけるべきポイントについて解説します。

目的の明確化と設計の重要性

データマート導入では、「誰が」「何のために」使うのかを具体的に定義することが必須です。

例えば、営業部門の顧客行動分析用なのか、経営層の意思決定支援用なのかによって、必要なデータの範囲や粒度は大きく異なります。

目的が不明確なデータマートは「データの墓場」となりがちです。

実際のビジネス課題や意思決定プロセスと紐づいていないデータ環境は、結局誰にも使われない無駄なシステムとなる危険性があります。

ある小売企業では、「店舗ごとの商品カテゴリ別販売分析」という明確な目的のもと、店長が日次で意思決定できるデータマートを構築したことで、在庫回転率が20%向上しました。

一方、「とりあえずデータを集めておこう」という姿勢で構築されたデータマートは、数カ月後には誰も参照しなくなったという失敗例も多く見られます。

目的が明確なデータマートは、ビジネス課題の解決に直結し、投資対効果(ROI)を最大化します。

また、目的を中心に据えた設計により、必要最小限のデータのみを含めることができ、システム負荷の軽減やメンテナンスコストの削減にもつながります。

データの整合性と管理の課題

複数のデータマートを運用する場合、全社的なデータの整合性を維持することが大きな課題となります。

発生しやすい問題

複数のデータマートを運用する環境では、いくつかの典型的な問題が発生しやすくなります。

まず挙げられるのが、部門間でのデータ定義の不一致です。

例えば「アクティブユーザー」という用語一つをとっても、マーケティング部門では「過去30日間にログインしたユーザー」を指す一方、製品開発部門では「過去90日間に特定機能を使用したユーザー」を指すといった齟齬が生じがちです。

次に問題となるのがマスターデータの不整合です。

例えば、顧客マスターが営業部門とマーケティング部門で別々に管理されている場合、同一顧客の情報が異なる可能性があり、顧客分析や顧客対応に支障をきたします。

さらに、計算ロジックの相違も見逃せない問題です。

例えば、売上の集計方法が財務部門では「出荷基準」、営業部門では「受注基準」というように異なれば、同じ「売上」という言葉でも部門間で数字が一致せず、混乱の原因となります。

対処法

これらの問題に対処するためには、いくつかの重要な施策が必要です。

まず、全社共通のデータディクショナリを整備し、主要なビジネス用語や指標の定義を標準化することが基本となります。

「売上」「顧客」「製品」といった基本的な概念から、部門固有の専門用語まで、会社全体で共通の定義を持つことで認識のずれを防ぎます。

次に、従属型データマートを基本アーキテクチャとして採用し、データウェアハウスを「単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)」として位置づけることも有効です。

各データマートは共通のデータウェアハウスから派生させることで、根本的なデータの整合性を担保できます。

さらに、メタデータ管理を徹底し、データの定義や変換ルールを文書化・共有することも重要です。

どのデータがどこから来て、どのように加工されているかを透明化することで、データへの信頼性を高め、適切な活用を促進できます。

これらの対策を組み合わせることで、データマートの分散化によるリスクを最小限に抑えつつ、そのメリットを最大化することが可能になります。

著者
整合性の欠如は、経営判断の誤りやデータへの信頼性低下につながる可能性があるため、特に重要な注意点です。

まとめ

ここまで、データマートの基本概念から導入メリット、注意点まで詳しく見てきました。

データマートを含むデータ基盤の整備は、最終的には「データドリブン経営」の実現を目指すものです。

これは、感覚や経験だけでなく、事実に基づいた判断を組織全体で行うことを意味します。

データマートはその重要な一角を担い、部門レベルでの「小さな成功体験」を積み重ねることで、全社的なデータ活用の機運を高める役割を果たします。

デジタル時代の競争を勝ち抜くためには、このようなデータ基盤の整備と活用が不可欠と言えるでしょう。

 

データマートについて「もっと詳しく知りたい」「導入してみたい」などございましたら、ぜひDX攻略部にご相談ください!

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