こんにちは、DX攻略部のkanoです。
Snowflakeを導入した企業から「経営ダッシュボードをSnowflakeの上に作り直したら、経営会議の中身が変わった」という声が増えてきています。
売上や利益といった結果の数字だけでなく、その背景にある現場KPIまで一気通貫で見られるようになることで、会議が「数字確認の場」から「打ち手を決める場」に変わっていくためです。
一方で、いざ自社で取り組もうとすると「どんな経営ダッシュボードを作ればよいのか」「Snowflakeならではの設計ポイントは何か」が分からず、着手できていないケースも少なくありません。
この記事では「Snowflake経営ダッシュボード事例4選」というテーマで、Snowflakeを中心にした経営ダッシュボードの全体像と、代表的な4つの活用パターン、さらにKPI設計と画面設計・導入ステップのポイントを整理します。
Snowflake導入を検討している経営層やDX推進担当、データチームの方が「自社ならどこから始めるか」を考えるきっかけになれば幸いです。
そして、DX攻略部では、Snowflake×Streamlitを活用した統合BI基盤構築支援サービスを行っています。
記事の内容を確認して、Snowflakeを自社に活用してみたいと考えた方は、下記のボタンをクリックしてぜひDX攻略部にご相談ください!
Snowflake経営ダッシュボードとは何か
この章では、経営ダッシュボードの基本的な役割と、Snowflakeを中心に据えたときの全体像を押さえます。
経営ダッシュボードの役割と、よくあるつまずきポイント
経営ダッシュボードの役割は大きく3つあります。
- 売上・粗利・利益・キャッシュフローなどの重要指標を1画面で俯瞰し、「今の状態」をすばやく共有できるようにする。
- その変化を新規・既存、商品別、チャネル別などに分解し、現場KPIとのつながりを見える化する。
- 「売上」「粗利」「解約率」などの定義を全社で揃え、会議のたびに数字の解釈で揉めないようにする。
現場では、部門ごとにバラバラのExcelやダッシュボードが存在し、会議前に数字合わせに追われるケースがよくあります。
グラフは多いのに「結局どこを見るべきか」が分かりにくい、更新が遅くて最新の数字が出てこない、といったつまずきも典型的です。
Snowflake経営ダッシュボードは、こうした課題を「データ基盤の設計」から見直すアプローチだと捉えると分かりやすくなります。
Snowflakeを中心にした経営ダッシュボード基盤の全体像
Snowflakeを中核に据える場合、販売・会計・在庫・人事・Webアクセス・ログなど社内外のデータをすべてSnowflakeに集約し、顧客・商品・組織などの共通マスタで統合します。
そのうえで、経営指標に必要な集計ロジックをSnowflake上のビューとして定義し、TableauやPower BI、LookerなどのBIツールや、Streamlit等のアプリから参照します。
これにより、経営ダッシュボード・部門ダッシュボード・アドホック分析がすべて同じ前提に立てるようになり、「どの数字が正しいのか」という議論を減らせます。
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Snowflakeで経営ダッシュボードまでのリードタイムを短縮できる理由
ここでは、なぜSnowflakeを使うと経営ダッシュボードの立ち上げや改善が早くなるのかを、2つの観点から整理します。
データ統合とモデリングをシンプルにするSnowflakeの特長
Snowflakeは、構造化データとJSONなどの半構造化データをまとめて扱えるクラウドDWHです。
「まずSnowflakeに集める」という設計にしやすく、最初から完璧なモデルを作らなくても、共通マスタと主要KPIの定義から始めて徐々に洗練させる進め方がとれます。
さらにSnowparkを使えば、Pythonなどのコードで前処理や特徴量作成、シミュレーション処理までSnowflake内で実行できます。
別システムにデータを出し入れせずに計算できるため、「どのデータをどのロジックで使っているか」を追いやすくなり、経営指標の再現性・説明性が高まります。
負荷分散と権限管理で「止まらない経営ダッシュボード」を実現する仕組み
経営ダッシュボードは、経営会議や決算タイミングなど「絶対に止まってほしくない」場面で使われます。
Snowflakeでは仮想ウェアハウスごとに計算リソースを分けられるため、「バッチ処理用」「分析用」「経営ダッシュボード閲覧用」と用途ごとに環境を分離できます。
これにより、重い処理と閲覧がぶつかってレスポンスが落ちるリスクを抑えられます。
また、ロールベースの権限管理や行・列レベルのセキュリティ機能により、役職や部門ごとに見られる情報の粒度を柔軟に制御できます。
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Snowflake経営ダッシュボード事例4選
ここからは、Snowflake経営ダッシュボードの具体像をイメージしやすくするために、代表的な4パターンを業種別の架空事例として紹介します。
事例1:製造業―グローバル拠点の売上・在庫を一枚で把握
グローバルに工場と販売拠点を展開する製造業A社では、拠点ごとに基幹システムが異なり、売上と在庫の集計に時間がかかっていました。
月次経営会議のたびに各拠点からExcelを集めて統合作業を行い、数字が合わず会議中に確認が入ることもあったのです。
Snowflake導入後は、各システムから売上・在庫データをSnowflakeに集約し、共通の商品マスタ・拠点マスタで統合しました。
BIツール上の経営ダッシュボードでは、世界地図上に「拠点別売上」と「在庫過多/在庫不足」を重ねて表示できるようにしたのです。
その結果、「どの拠点からどこへ在庫を移すか」「どの地域に生産能力を再配分すべきか」といった議論にすぐ入れるようになり、在庫回転率と欠品率の同時改善につながりました。
事例2:小売・EC―粗利・在庫回転率を軸にした商品ポートフォリオ管理
小売・ECを運営するB社では、売上ランキングだけで商品評価をしていたため、「売上は大きいが粗利率が低く在庫も重い商品」が全体の収益性を押し下げていました。
店舗とECの数字も別々に集計されており、ポートフォリオの全体像が見えづらい状態です。
SnowflakeにPOSデータ、EC購入データ、在庫データ、仕入価格データを統合し、商品別の売上・粗利・在庫回転率を計算するモデルを構築しました。
経営ダッシュボードでは、売上・粗利額・在庫金額をバブルチャートで表現し、「残すべき主力商品」「見直すべき商品」が一目で分かるようになったのです。
これにより、不採算商品の整理と在庫圧縮を進めつつ、全体の粗利率を高める意思決定がしやすくなりました。
事例3:サブスク/SaaS―MRR・解約率・LTVをひと目で追える経営ダッシュボード
サブスクリプション型サービスを提供するSaaS企業C社では、営業・CS・プロダクトがそれぞれ別ツールで数字を見ており、経営会議でMRR、解約率、LTVを一元的に把握することが難しい状況でした。
新規獲得は好調でも、「どのチャネルの顧客が長く使ってくれているか」が分かりにくいことが課題だったのです。
そこで、Snowflakeに契約情報、請求データ、利用ログ、サポート履歴を顧客IDで統合し、ライフサイクル全体を追えるデータモデルを構築しました。
経営ダッシュボードでは、全体のMRR推移と新規・解約・アップセルの内訳、チャネル別の解約率やLTVをひと目で比較できるようにしました。
その結果、LTVの高いチャネルに投資を集中させる方針を取りやすくなり、営業・マーケティング予算の配分が明確になりました。
事例4:サービス業―現場KPIと経営指標を多階層でつなぐダッシュボード
多店舗展開するサービス業D社では、店舗ごとの売上・客数・稼働率といった現場KPIは現場システムで、経営指標は別レポートで管理されており、「現場の努力が経営数字にどう効いているか」が見えにくい状態でした。
Snowflakeに店舗別売上データ、来店データ、シフト情報、顧客満足度アンケートなどを統合し、「店舗グループ別→店舗別→時間帯別」とドリルダウンできるダッシュボードを構築したのです。
トップには売上・利益・客数などの経営指標を置き、その下にグループ別・店舗別KPIを階層的に並べました。
これにより、好成績店舗のKPIパターンを把握して他店舗へ横展開しやすくなり、現場側も「自分たちのKPIが経営にどうつながるか」を実感できるようになりました。
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経営会議が変わるKPI設計のポイント
ここでは、Snowflake経営ダッシュボードを活かすためのKPI設計の考え方をまとめます。
経営層が見るべきKPIと現場KPIのつなぎ方、Snowflake上での定義管理、1枚目の画面設計を整理します。
経営層が見るべきKPIと、現場KPIのつなぎ方
経営層が毎回確認するKPIは、5〜10個程度に絞るのがおすすめです。
売上高、粗利額、営業利益率、キャッシュフロー、MRR、解約率など、「会社の健康状態を示す指標」を定義します。
一方で現場では、商談数、受注率、在庫日数、来店数、利用頻度など、より細かなKPIを追っています。
重要なのは「経営KPIと現場KPIが数式でつながるようにすること」です。
売上高=商談数×受注率×平均単価、解約率=解約数÷期首契約数、といった関係をSnowflake上のビューとして定義しておくと、「数字が悪化したときにどこまで掘るか」が自然に決まります。
Snowflake上でKPI定義を一元管理する考え方
KPIがExcelや個人メモでバラバラに計算されていると、すぐに定義のブレが発生します。
Snowflake経営ダッシュボードを前提にするなら、主要KPIの定義はSnowflake上に寄せて管理する方針が重要です。
実務では、まず経営層と「最終的に見たいKPI」を合意し、それを構成する要素(分子・分母、期間、対象セグメントなど)を整理します。
そのうえでSnowflake上にKPI用ビューを作成し、テーブル名・カラム名の命名ルールも含めてドキュメント化します。
これにより、「この数字はどう計算しているのか」をいつでも確認でき、経営と現場の認識を揃えやすくなります。
経営ダッシュボードの「1枚目」に置くべき指標
経営ダッシュボードの1枚目は、経営会議で必ず開く画面です。
ここには「会社の状態が30秒で分かる」「変化したらすぐ議論すべき」指標だけを載せます。
具体的には、売上高・粗利額・営業利益率・主要KPI(MRR、解約率、在庫回転率など)の時系列推移と前期比・予算比をカード形式で配置する構成が分かりやすいでしょう。
そのうえで、事業別・地域別・チャネル別にドリルダウンできるようにしておくと、1枚目だけで全体像と論点が整理しやすくなります。
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可視化と画面設計のポイント
次に、実際の画面づくりに関するポイントです。経営層向けと現場向けの役割分担、視線の流れを意識したレイアウト、モバイル閲覧への対応を見ていきます。
経営層向けダッシュボードと現場向けダッシュボードの役割分担
1つのダッシュボードで経営層と現場の両方を満たそうとすると、情報過多になりがちです。
経営層向けは「全体の状態と論点を掴む」、現場向けは「自部門のアクションを決める」と役割を分け、画面も分けるほうが結果的に分かりやすくなります。
視線の流れを意識したレイアウトとグラフ選定
多くの人の視線は左上から右下へ流れます。
経営ダッシュボードでは、最も重要な指標を左上に、その次に重要な指標やグラフを右側・中央に、詳細情報を下段に配置すると、自然と重要度順に目に入る画面になります。
グラフも目的ごとに使い分けましょう。
時間変化を見るなら折れ線、構成比なら積み上げ棒や円、2軸の関係を見たいなら散布図やバブルチャート、といった定番の組み合わせを選ぶことで、経営層が直感的に読み取りやすい画面になります。
モバイル・タブレット閲覧を前提にした設計のコツ
経営層がタブレットやスマートフォンからダッシュボードを見るケースも増えています。
モバイル閲覧を前提にする場合は、ファーストビューに最重要指標が入るようにし、文字やボタンをタップしやすいサイズに保つことが重要です。
また、マウスホバー前提のツールチップに頼りすぎると、モバイル環境では情報にたどり着きにくくなります。
Snowflakeと連携するBIツールのモバイルレイアウト機能を活用し、「PCでもタブレットでも同じ理解が得られる」画面を意識して設計するとよいでしょう。
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導入ステップと体制づくり
最後に、Snowflake経営ダッシュボードを実際に立ち上げる際の進め方と体制づくりについて要点を押さえます。
PoCから本番展開までの進め方と失敗しやすいポイント
全社の経営ダッシュボードを一度に作ろうとすると、範囲が広すぎて頓挫しがちです。
まずは「毎回議論になるが数字がバラつくテーマ」を1つ選び、そこに絞ったPoCから始めるのがおすすめです。
必要なデータソースをSnowflakeに集約し、シンプルなKPIと画面を作って経営会議で数回試し、そのフィードバックを踏まえて改善します。
そのうえで、成功した型を在庫・解約率・店舗別業績など他の領域に横展開していくと、無理なく全社に広げていくことができます。
経営層・事業部門・データチームそれぞれの役割
Snowflake経営ダッシュボードを成功させるには、三者の役割分担が重要です。
経営層は「何を意思決定したいのか」「どの指標を重視するのか」を明確にし、プロジェクトの優先度を示します。
事業部門は現場で追っているKPIや業務の実態を伝え、「どの粒度の数字があれば動けるか」を具体的に共有します。
データチームはSnowflake上でのデータ統合・KPI定義・BI連携を担い、「このデータ構造ならこういう分析も可能です」と提案します。
三者が同じダッシュボード画面を見ながら議論することで、「何のための経営ダッシュボードか」という目的がぶれにくくなります。
Snowflake×BIツール×業務アプリ(Streamlitなど)の組み合わせ方
Snowflake経営ダッシュボードは、Snowflake単体では完結しません。
Snowflakeを「真実のソース」として、その上にBIツールでダッシュボードを構築し、必要に応じてStreamlitなどの業務アプリでシミュレーションや入力フローを補完する構成が現実的です。
例えば、経営ダッシュボードで現状の数字を確認し、その横に「価格を1%上げた場合の利益インパクト」を試せる簡易シミュレーターを置く、といった使い方も可能です。
裏側のデータをSnowflakeに揃えておけば、ダッシュボードでもシミュレーターでも同じ定義の数字を使えるため、経営会議の場で「見て・考えて・その場で試す」体験を実現しやすくなります。
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まとめ
Snowflake経営ダッシュボードは、Snowflakeを単なるDWHとして使うのではなく、「経営と現場が同じ数字を見ながら意思決定するための共通基盤」として活用する取り組みです。
Snowflakeのデータ統合力と柔軟なスケール、権限管理の仕組みを活かすことで、業種を問わず「数字確認の会議」から「打ち手を決める会議」への転換を後押しできます。
自社で取り組む際は、まず1つのテーマに絞ったPoCから始め、KPI定義をSnowflake上に集約し、経営層・現場・データチームの三者でダッシュボードを育てていくことが成功の近道です。
本記事の内容を、自社のSnowflake活用や経営ダッシュボード構想を具体化するヒントとしてご活用いただければ幸いです。
また、Snowflakeの導入を検討している方は、DX攻略部で紹介している、その他のSnowflakeの記事も参考にしていただければと思います。
そして、DX攻略部では、Snowflake×Streamlitを活用した統合BI基盤構築支援サービスを行っていますので、Snowflake導入を検討している企業様はぜひDX攻略部にご相談ください!