こんにちは、DX攻略部のkanoです。
企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するとき、データ基盤の選定とそのコスト見通しは最初の関門になります。
Snowflakeはクラウド型データウェアハウスとして高い評価を得ていますが、「料金をどうシミュレーションすれば予算超過を防げるのか」という疑問は多くの担当者が共有します。
本記事ではSnowflake価格の仕組みを分解し、具体的な試算手順と運用時のモニタリング方法までを体系的に解説します。
Snowflake価格シミュレーションの目的を定める
Snowflakeの利用料を正確に予測するうえで、最初に「何を達成したいのか」を明確にします。
目的が曖昧だと、試算範囲が広がり過ぎて実行フェーズで迷走します。
その点に注意しながら進めるためのポイントを確認しましょう。
DX推進で求められるコスト見通しを明確化する
DXプロジェクトでは「初期導入費」、「次年度以降の運用費」、「ピーク時の上限費用」の3つを把握する必要があります。
それぞれを明確に設定すると、ステークホルダーへの説明が容易になります。
シミュレーションで得られる成果を設定する
成果物として「年間コスト見積もりレポート」、「変動要因の一覧」、「リスクシナリオ別の追加費用試算」を定義します。
ゴールを決めることで、後続のデータ収集やモデル構築に優先順位を付けられます。
事前にさまざまなシミュレーションを行って、得られる成果がどういったものか検討してみましょう。
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Snowflakeの料金体系を分解して理解する
Snowflakeの料金はストレージ、コンピュート(仮想ウェアハウス)、その他サービス費用に分かれます。
それぞれを個別に理解することが精度の高い試算につながります。
Snowflakeの料金体系を確認していきましょう。
ストレージ料金の構造を確認する
ストレージは使用量課金で、クラウドプロバイダー(AWS、Azure、GCP)のリージョンごとに単価が異なります。
長期保存データには圧縮と自動マイクロパーティション化が適用され、実質的な保存容量が削減されます。
利用量(TB/月)を把握し、リージョンの単価を掛け算することで試算できます。
コンピュートクレジットの消費モデルを把握する
クレジットは仮想ウェアハウスが1時間稼働するごとに消費されます。
ウェアハウスサイズ(X-Small〜4X-Large)とクラスター数によってクレジット消費が線形に増減します。
クエリ実行時間を集計し、必要ウェアハウス時間を見積もることでコンピュートコストを計算できます。
サービス・データ転送料金を補足する
メタデータ管理などの「Snowflakeサービスレイヤー」には月額10%程度の追加課金が発生します。
さらに、アカウント間コピーやクラウド間レプリケーションを行う場合はデータ転送料が生じるので、必要に応じて加算します。
Snowflake料金体系の組み合わせパターンを整理する
Snowflakeでは課金方式を組み合わせることで、利用状況に応じた最適化を図れます。
従量課金モデルでストレージとコンピュートを分離して試算する
従量課金(オンデマンド)は使用量に応じて支払うモデルです。
ピークが不定期で利用頻度が低いワークロードには最適で、ストレージとコンピュートを個別に増減できるため、過剰プロビジョニングを避けられます。
サブスクリプション契約でコストを固定化するメリットを評価する
一定のクレジット量を前払いするサブスクリプション(Capacityモデル)を選ぶと、単価割引を受けられます。
利用量が年間を通じて安定している企業では、総コストを計画的に抑えられます。
エンタープライズ向けクレジットバンドルで割引率を最大化する
大規模導入ではSnowflakeと交渉して専用バンドル契約を締結できます。
通常のサブスクリプションより高い割引率を得られる一方、未使用クレジットは期末に失効するため、利用計画を精緻に管理する必要があります。
Snowflake課金例をケーススタディで比較する
Snowflakeの具体例を通じてシミュレーション結果をイメージすることで、予算計画の説得力を高められます。
中小企業、大企業などをベースに考えていきましょう。
中小企業シナリオ:データマート運用の月額コストを計算する
従業員規模300名の中小企業が、日次ETLとBIダッシュボード用にSmallウェアハウスを利用するケースを想定します。
月間ストレージ1TB、ウェアハウス稼働時間150時間で試算すると、ストレージ約2万円、コンピュート約10万円、サービス費用約1.2万円となり、総額は約13.2万円になります。
もし、すでに別のツールを使っている場合、その費用と比較してSnowflakeの月額コストが高くなるか、低くなるか検討してみてください。
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大企業シナリオ:ビッグクエリ集計のピーク時コストを推定する
従業員5000名の大企業が月末に4X-Largeウェアハウスを使って10時間の集計を実行する場合を想定します。
単価割引適用後でも、ピーク時のコンピュートだけで約120万円が発生します。
ピーク対策としてマテリアライズドビューやクエリ最適化を併用すると、ウェアハウスサイズを落とせます。
大企業になるとデータ量が膨大となり、どうしてもコストがかかりやすくなるので、その点は時間をかけて予算を検討する必要があるでしょう。
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開発・本番併用シナリオ:ステージング環境の追加費用を把握する
開発者10名がステージング用Smallウェアハウスを平日日中8時間使う場合、月160時間で約11万円が上乗せされます。
自動停止を15分に設定し、実稼働時間を半分に抑えるとコストを約5.5万円まで削減できます。
このようにSnowflakeではコストを下げるための方法が用意されていますので、適宜設定を変更してみてください。
シミュレーションに必要な利用データを収集する
正確な試算には実利用に基づくデータが欠かせません。
Snowflakeの料金をシミュレーションするために、どういったデータを収集しておけばいいのか紹介します。
現行環境のデータ量と増加率を取得する
オンプレミスDWHや既存クラウドストレージのデータ量を棚卸しします。
さらに、前年同期比の増加率を計算し、将来の容量を予測しましょう。
将来的な増加率を予測しておくことが、ツールを使い続ける上で重要になります。
クエリパターンと実行頻度を分類する
バッチ処理、BIダッシュボード、アドホック分析などにクエリを分類し、それぞれの実行回数と平均実行時間を測定します。
分類によりワークロード特性が明確になり、適切なウェアハウスサイズを選択できます。
ピークタイムとアイドルタイムを切り分ける
曜日・時間帯別にクエリ発生頻度をプロットし、ピーク帯を把握しましょう。
アイドルタイムに自動停止を設定することで、無駄なコンピュート費用を削減できます。
このように活発に動かすときは動かし、節約すべきときは節約することで、コスト削減につなげられるのもSnowflakeの特徴です。
Snowflakeの価格をシミュレーションする
Snowflakeの価格を検討するためのシミュレーションを実施してみましょう。
サブスクリプションを使った場合の価格差などを含めて紹介します。
サブスクリプション契約シナリオ
東京リージョン(AWS ap-northeast-1)Standard Editionのオンデマンド単価は1クレジット=$2.85(約¥430※$1=¥150換算)です。
ここで年間6万クレジットを前払いするCapacity契約を結び、15%のボリュームディスカウントを受けると単価は$2.42(約¥360)になります。
Mサイズ(4クレジット/時)のウェアハウスを平日8時間×20日間稼働させると、以下のような価格になります。
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オンデマンド: 4×8×20×$2.85=$1 824/月(約¥274,000)
-
Capacity契約: 4×8×20×$2.42=$1 548/月(約¥232,000)
このように、月あたり約¥42,000を削減できるので、サブスクリプション契約を使うことも検討してみてください。
ウェアハウスサイズ別クレジット早見表
ウェアハウスサイズ別のクレジット価格を以下にまとめました。
サイズ | XS | S | M | L | XL | 2XL | 3XL | 4XL | 5XL | 6XL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
クレジット/時 | 1 | 2 | 4 | 8 | 16 | 32 | 64 | 128 | 256 | 512 |
-
開発環境や短時間ジョブ: XS〜Sで十分
-
BIダッシュボード: M〜Lで安定表示を確保
-
月次/四半期決算集計: XL以上をピーク時のみAuto-Scaleで拡張
開発環境などをもとに、どの程度クレジットが消費されるか考える参考に活用してみてください。
クレジット単価×消費量で月額を計算するフレームワーク
ざっくりとですが、クレジット単価と消費量で月額を計算するためのフレームワークを紹介します。
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ウェアハウス別クレジット消費量を算出(例: Mサイズ×120時間=480クレジット)
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リージョン単価を掛ける(例: 東京$2.85→$1 368)
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Cloud Services加算(消費クレジットの10%≒48クレジット)を反映しましょう
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ストレージ費用(1 TBあたり月$23前後)を加算します
この4ステップをExcelに組み込んでおけば、新しいワークロードが増えてもすぐに試算が可能です。
運用フェーズで予算超過を防止する
Snowflake導入後も継続的な監視と改善が不可欠です。
どういった点に注目して、Snowflakeを利用していくかの参考にしてください。
定期的な実績モニタリングを継続する
日次で消費クレジットを確認し、月次で予算見込みとの差異をレビューします。
差異が大きい場合は即座に原因を調査しましょう。
ガバナンスルールを策定して利用を統制する
ウェアハウス新規作成やサイズ変更を申請制にするなどのルールを定めます。
タグ付けで部門別コスト配賦を行い、責任範囲を明確にすることで、利用を統制することが可能になります。
継続的なシミュレーションで計画を更新する
新しいワークロード追加や利用者増加のたびにシミュレーションモデルを更新します。
年次予算策定時だけでなく、四半期ごとに再試算すると計画精度が向上します。
まとめ
Snowflakeの価格シミュレーションは「料金体系の理解」、「実データの収集」、「シナリオごとのモデル構築」、「結果の検証と運用モニタリング」という4段階に分けて進めると精度と再現性を高められます。
ストレージとコンピュートを個別に最適化し、契約形態を柔軟に選択することで、DXプロジェクトの予算超過リスクを最小限に抑えられます。
継続的なモニタリングと再シミュレーションを行う姿勢が、Snowflake活用を成功に導きます。
DX攻略部では、Snowflake×Streamlitを活用した統合BI基盤構築支援サービスを行っていますので、Snowflake導入を検討している企業様はぜひDX攻略部にご相談ください!